2024.02.12
「2024年問題」とは、働き方改革関連法により2024年4月1日から物流業界に生じる様々な問題を指す言葉です。主に「自動車運転の業務」の時間外労働が年960時間と上限規制されることに起因します。「物流の2024年問題」とも呼ばれます。 いくつか改正点がある働き方改革関連法の中でも、「時間外労働の上限規制」が物流業界にとって大きな影響を与えると言われています。なぜなら時間外労働の上限規制によりドライバー一人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなると懸念されているからです。これにより、トラック運送・物流企業の売上や利益の減少、トラックドライバーの収入減少、荷主企業の運賃上昇などの問題が起きると危惧されています。
働き方改革関連法とは、「労働者が多様な働き方を選択できる社会」の実現を目指す目的で、労働基準法などの関連法を改正したものです。2018年に公布、2019年から順次施行されています。この背景として挙げられるのが「少子高齢化に伴う労働人口減少」や「長時間労働の慢性化」などです。改正により、労働環境の見直しで生産性向上を図りたいとの意図があります。改正された法令は多岐にわたりますが、おもな改正点は下記の通りです。
上記の中で、特に物流業界にとって影響の大きいポイント3つを解説します。
物流業界で一番影響のある改正点は、時間外労働の上限規制です。自動車運転など一部の事業・業務に猶予されていた時間外労働の上限規制適用が2024年4月1日から開始されます。
時間外労働の上限規制は、大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月からすでに施行されています。労働基準法の改正により、原則月45時間、年360時間の時間外労働時間の上限が定められました。労使間で36(サブロク)協定が合意された場合でも、月100時間未満、年720時間などの上限規定があります。
一方、自動車運転の業務、建設事業、医師など一部の事業・業務は、2024年3月末まで猶予されており、2024年4月から適用が始まります。
自動車運転の業務では、時間外労働の上限は労使間で36協定が合意された場合、年960時間となっており(一般の業務で36協定が合意された場合は年720時間)、実情に合わせた形となっています。一般の業務では上限のある時間外労働と休日労働の合計についても、月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする規制は適用されません。ただし、違反した場合、6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦が科される可能性があります。運送業界の経営者、配車係は遵守するよう細心の注意を払いましょう。
中小企業に対して月60時間超の時間外労働への割増賃金引上げが適用された点も、物流企業に影響するポイントです。
労働基準法では、時間外労働に対し原則25%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられています。また、大企業では月60時間を超える労働時間に対して、50%以上の割増賃金の支払い義務がありました。働き方改革関連法により2023年4月1日から中小企業にも、時間外労働が月60時間を超えた場合、50%以上の割増賃金の支払い義務が適用されます。
人件費が大きく増加する可能性があるため、注意が必要です。残業の多い物流中小企業へのインパクトは大きく、収益の減少が懸念されます。
具体例で解説しましょう。ある月において、下図のように残業が発生したとします。起算日は月初の1日、休日は土曜日・日曜日で法定休日は日曜日と仮定します。平日および土曜日の時間外労働時間について、60時間を超えた時間から割増賃金率50%以上が適用となります。下図では、24日と30日の計10時間が割増賃金率50%以上に該当します。
また、深夜時間帯である22時~翌5時に月60時間を超える時間外労働をした場合には、深夜労働の割増賃金率25%以上を加える必要があります。よって、深夜時間帯に月60時間を超えた時間外労働の割増賃金率は、下図のように計75%(深夜労働の割増賃金率25%+時間外労働の割増賃金率50%)で計算することになります。
なお、法定休日に行った労働時間は、月60時間の時間外労働の時間には含みません。上図でいうと、土曜日の時間外労働は含みますが、日曜日の時間外労働は除きます。「法定休日」とは、使用者は労働者に対し1週間に1日または4週間に4回の休日を与えることが義務付けられており、この休日を法定休日といいます。法定休日に労働した場合は、35%以上の割増賃金率となります。
企業においては割増賃金により人件費が増加され、収益減少が懸念されます。
勤務間インターバル制度も、物流企業に影響するポイントと言えます。勤務間インターバル制度とは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に「一定時間以上の休息時間」を確保する取り組みを導入することです。運輸業界における自動車運転手の「一定時間以上の休息期間」は、改善基準告示でこれまで「8時間以上」の確保が必要とされていました。2022年12月にこの規定が「継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らないとする」と改正され、2024年4月1日から適用されます。
睡眠不足での勤務は事故につながるため、安全な運行にはドライバーの健康状態への考慮が不可欠です。企業の社会的責任として、休息時間の確保を前提とした運行計画を作成するよう留意しましょう。
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2024.02.05
2024.02.19
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「2024年問題」とは、時間外労働の上限規制などに代表される働き方改革関連法の施行に伴い、物流業界で生じる様々な問題を示す言葉です。運送会社では、収入減少によるドライバーの離職や売上の減少が懸念されます。また荷主企業にとっても運賃値上げの可能性が危惧されるでしょう。
2024年問題とは?
トラックドライバーにも時間外労働の上限規制が適用
「2024年問題」とは、働き方改革関連法により2024年4月1日から物流業界に生じる様々な問題を指す言葉です。主に「自動車運転の業務」の時間外労働が年960時間と上限規制されることに起因します。「物流の2024年問題」とも呼ばれます。
いくつか改正点がある働き方改革関連法の中でも、「時間外労働の上限規制」が物流業界にとって大きな影響を与えると言われています。なぜなら時間外労働の上限規制によりドライバー一人当たりの走行距離が短くなり、長距離でモノが運べなくなると懸念されているからです。これにより、トラック運送・物流企業の売上や利益の減少、トラックドライバーの収入減少、荷主企業の運賃上昇などの問題が起きると危惧されています。
物流業界に影響のある
働き方改革関連法のおもなポイント
働き方改革関連法とは、「労働者が多様な働き方を選択できる社会」の実現を目指す目的で、労働基準法などの関連法を改正したものです。2018年に公布、2019年から順次施行されています。この背景として挙げられるのが「少子高齢化に伴う労働人口減少」や「長時間労働の慢性化」などです。改正により、労働環境の見直しで生産性向上を図りたいとの意図があります。改正された法令は多岐にわたりますが、おもな改正点は下記の通りです。
上記の中で、特に物流業界にとって影響の大きいポイント3つを解説します。
①時間外労働の上限規制
物流業界で一番影響のある改正点は、時間外労働の上限規制です。自動車運転など一部の事業・業務に猶予されていた時間外労働の上限規制適用が2024年4月1日から開始されます。
時間外労働の上限規制は、大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月からすでに施行されています。労働基準法の改正により、原則月45時間、年360時間の時間外労働時間の上限が定められました。労使間で36(サブロク)協定が合意された場合でも、月100時間未満、年720時間などの上限規定があります。
一方、自動車運転の業務、建設事業、医師など一部の事業・業務は、2024年3月末まで猶予されており、2024年4月から適用が始まります。
自動車運転の業務では、時間外労働の上限は労使間で36協定が合意された場合、年960時間となっており(一般の業務で36協定が合意された場合は年720時間)、実情に合わせた形となっています。一般の業務では上限のある時間外労働と休日労働の合計についても、月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする規制は適用されません。ただし、違反した場合、6か⽉以下の懲役または30万円以下の罰⾦が科される可能性があります。運送業界の経営者、配車係は遵守するよう細心の注意を払いましょう。
②月60時間超の時間外労働への割増賃金引上げ
中小企業に対して月60時間超の時間外労働への割増賃金引上げが適用された点も、物流企業に影響するポイントです。
労働基準法では、時間外労働に対し原則25%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられています。また、大企業では月60時間を超える労働時間に対して、50%以上の割増賃金の支払い義務がありました。働き方改革関連法により2023年4月1日から中小企業にも、時間外労働が月60時間を超えた場合、50%以上の割増賃金の支払い義務が適用されます。
人件費が大きく増加する可能性があるため、注意が必要です。残業の多い物流中小企業へのインパクトは大きく、収益の減少が懸念されます。
月60時間超の時間外労働への割増賃金率の具体例
具体例で解説しましょう。ある月において、下図のように残業が発生したとします。起算日は月初の1日、休日は土曜日・日曜日で法定休日は日曜日と仮定します。平日および土曜日の時間外労働時間について、60時間を超えた時間から割増賃金率50%以上が適用となります。下図では、24日と30日の計10時間が割増賃金率50%以上に該当します。
また、深夜時間帯である22時~翌5時に月60時間を超える時間外労働をした場合には、深夜労働の割増賃金率25%以上を加える必要があります。よって、深夜時間帯に月60時間を超えた時間外労働の割増賃金率は、下図のように計75%(深夜労働の割増賃金率25%+時間外労働の割増賃金率50%)で計算することになります。
なお、法定休日に行った労働時間は、月60時間の時間外労働の時間には含みません。上図でいうと、土曜日の時間外労働は含みますが、日曜日の時間外労働は除きます。「法定休日」とは、使用者は労働者に対し1週間に1日または4週間に4回の休日を与えることが義務付けられており、この休日を法定休日といいます。法定休日に労働した場合は、35%以上の割増賃金率となります。
企業においては割増賃金により人件費が増加され、収益減少が懸念されます。
③勤務間インターバル制度
勤務間インターバル制度も、物流企業に影響するポイントと言えます。勤務間インターバル制度とは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に「一定時間以上の休息時間」を確保する取り組みを導入することです。運輸業界における自動車運転手の「一定時間以上の休息期間」は、改善基準告示でこれまで「8時間以上」の確保が必要とされていました。2022年12月にこの規定が「継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らないとする」と改正され、2024年4月1日から適用されます。
睡眠不足での勤務は事故につながるため、安全な運行にはドライバーの健康状態への考慮が不可欠です。企業の社会的責任として、休息時間の確保を前提とした運行計画を作成するよう留意しましょう。